Brain+ お役立ち情報

Brain+で楽しむ辞書の彼是

古語辞典のキホン3~助動詞を見分けよう

生徒の皆さんは、分からない単語があった時に辞書を引いていますか。ネット検索する人もいるでしょうし、それで事足りる場合も多いと思います。しかし、それでも辞書を引くことに意味があるのは、辞書は、学ぶための様々なヒントも合わせて教えてくれるからです。

古文は、現代の日本語と少し異なる文法で書かれています。また、現代と似た言葉でも、当時の時代背景や社会文化の違いを知らないと、意味を取り違えてしまうこともあります。古語辞典には、そのルールや知識が簡潔に書かれていますが、辞書特有の表記方法を知らないと読み取ることができません。本記事で、古語辞典を読む際のキホンを押さえておきましょう。


「ぬ」の1文字に様々な意味

前回の記事では「風立ちぬ」の「立ち」を古語辞典で引いてみましたが、今回は、引き続き「ぬ」を調べてみましょう。前回同様、とりあえず終止形を考えずにそのまま「ぬ」を入力してみます。

出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

Brain+の旺文社 全訳古語辞典では、「ぬ」の検索結果は、上から下記の5項目が並びます。

  • ①【活用】ぬ→ず(体)
  • ②ぬ||ヌ
  • ③ぬ(寝)
  • ④ぬ
  • ⑤ぬ
出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

それぞれ本文を確認すると、下記が分かります。

  • ①は助動詞「ず」の説明
  • ②は仮名の成り立ち(字源)の説明
  • ③は動詞「ぬ」の説明
  • ④は助動詞「ぬ」の説明
  • ⑤は助動詞「ず」の連体形「ぬ」の説明

まず②は、意味の説明ではないので、今回は無視して構いません。

①(ぬ→ず)は、前回記事の「立ち」と同様に、終止形以外の活用形に合致して検索結果にあがっています。なお、⑤は①と内容が被っています(※)ので、以下では、一旦無視して話を進めることとします。

※助動詞「ず」のような重要単語の活用形は、見出し語に個別に記載されている場合があり、あらためて解説が記載されています。

結局、①、③、④の3項目から当てはまるものを考えることになりますが、③の動詞は、その意味からも違うのは明らかなので、①か④のどちらかであり、この2つはどちらも助動詞です。結局この助動詞の違いが、前回記事の冒頭で触れた、「風立ちぬ」は立ったのか、立たないのかの判断の分かれ道になるわけですね。

助動詞や助詞は「意味」と「接続」を確認しよう

ところで、多くの学習者用の古語辞典では、助動詞や助詞は、冒頭で2つの解説を記載しています。1つ目が「意味」、2つ目が「接続」です。

出典:新全訳古語辞典(大修館書店)

まず1つ目の「意味」に関しては、解説と当てはめる現代語訳の例が記載されていますが、現代語訳をあれこれ考える前に「(大意の)分類」が記載されているので確認しておきましょう。上記例で言えば、①の「ず」であれば「打消」、④の「ぬ」の場合は「完了」「確述(強意)」「並立」の3種類の分類があります。①(打消)であればその文章は否定的な主旨になりますし、④であればどれも肯定的な主旨になるでしょう。このように助動詞は、文章の主旨を左右することが多く、細かな訳し方以前に、意味の分類を覚えておくと良いです。

今回の例では、①であれば否定=立たない、④であれば肯定=立った、となりますが、そこで重要なヒントを与えてくれるのが、2つ目の「接続」です。接続とは、その助動詞の前の単語の活用形を確定するルールのことです。

 今回の例で言えば、①は「未然形」に付き、④は「連用形」に付くと記載されています。前回の記事で、「風立ちぬ」の「ぬ」の前の動詞「立ち」が連用形と調べたことを思い出せば、続く「ぬ」は④でしかありえない、となります。ということで、「風立ちぬ」は、風が立った、が正解です

 ここまで見てきたように、助動詞の接続を覚えることで、同音の言葉でも見分けて、意味のあたりをつけることができます。主な助動詞は28種類もあります。活用形も含めると全部を覚えるのは大変ですが、接続で分類して覚えることで品詞分解の手がかりとなり、文の主旨を取り違えないようにできるでしょう。

接続による助動詞の分類

未然形:る(らる)、す(さす、しむ)、ず、じ、む(むず、まし)、まほし

連用形:き(けり)、つ(ぬ、たり)、けむ、たし

終止形:べし(らむ、らし、めり)、まじ、なり

連体形:なり(たり)、ごとし

已然形:り ※サ変動詞の未然形にも付く

出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

また接続で分類して覚えておけば、(助動詞の前にくる)動詞や形容詞の活用形を特定できれば、接続から、次に来る助動詞のあたりがつくようになり、助動詞の意味から、その文の主旨が見えてくることになります。

古文は日本語ですので、現代の日本語を自然に使えている人には、ある程度は文章をたどることができるのですが、ところどころに、助動詞のような古語特有の文法のルールを知らないと、主旨を間違えかねない箇所がでてきます。文法のルールを学ぶには、授業はもちろん、教科書や参考書などでしっかり学習していくしかありません

ただし、Brain+を利用して古語辞典を引くメリットの1つに、分からない文字列はそのまま入力して、(その文字列に該当する見出し語があるなしを含め)瞬時に確認できる、という点があります。つまり、品詞分解ができない文も、まずは入力して品詞の切れ目を探していくという調べ方も使えます。

今回の記事では助動詞をとりあげましたが、助詞の係り結びや、敬語など、古文特有のルールが他にも沢山ありますが、古語辞典は、豊富な例文と解説で、そのルールも含めて教えてくれます。古典の楽しさは、古来の文法のルールを覚えることではなく、当時の日本人の生活や文化に、文章を通じて想いを馳せることだと思いますので、まずは文法にしり込みをせずに、辞書に頼って古文の世界に入り浸ってみてください。気になる箇所を古語辞典で繰り返し引く癖をつけることで、文法の知識も自然に定着してくると思います。

「古語辞典のキホン」の記事リスト
ホーム Brain+ お役立ち情報 古語辞典のキホン3~助動詞を見分けよう

Contact

問い合わせ先

Brain+ に関しての各種お問い合わせをメールにて承ります。

製品に関する
お問い合わせ

利用方法は、「Brain+利用ガイド」もご参考ください。

試用に関する
お問い合わせ

試用は学校関係者の方に限らせていただいています。