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古語辞典のキホン2~単語の区切りを見分けよう

生徒の皆さんは、分からない単語があった時に辞書を引いていますか。ネット検索する人もいるでしょうし、それで事足りる場合も多いと思います。しかし、それでも辞書を引くことに意味があるのは、辞書は、学ぶための様々なヒントも合わせて教えてくれるからです。

古文は、現代の日本語と少し異なる文法で書かれています。また、現代と似た言葉でも、当時の時代背景や社会文化の違いを知らないと、意味を取り違えてしまうこともあります。古語辞典には、そのルールや知識が簡潔に書かれていますが、辞書特有の表記方法を知らないと読み取ることができません。本記事で、古語辞典を読む際のキホンを押さえておきましょう。


「風立ちぬ」は立ったの?立たないの?

「風立ちぬ」という有名なアニメ映画がありますが、本作の英語版のタイトルをご存じでしょうか。正解は「The Wind Rises」ですが、この2つのタイトルの違いには、古語辞典を引く際の色々な示唆があります。

注:「風立ちぬ」は株式会社スタジオジブリの商標登録です

この2つのタイトルの明らかな違いとして、単語の切れ目が明確か否か、という点が挙げられます。古文に限らないですが、日本語は単語の切れ目が英語に比べると分かり辛いといえます。辞書は単語ごとに調べるのが基本であり、「風立ちぬ」を古語辞典で引くには、まず「風立ちぬ」=「かぜ」「たち」「ぬ」と単語に分解する必要があります。一方で「The Wind Rises」は各単語を英和辞典で引くのは簡単ですよね。

また「風立ちぬ」は、「してはならぬ」という現代でもよく耳にする否定の表現を思い出すと、風が「立つ」のか「立たない」のか分からなる方もいるかもしれません。一方で、「The Wind Rises」が否定なのか否定じゃないのかは、すぐに判断がつくでしょう。

更に、これも古文に限らずですが、日本語は様々な「省略」がみられます。「風立ちぬ」も、現代文で主語を正確に伝えるなら「風が」と格助詞が入るところですね。日本語は主語ですら省略されることも多く、単に単語の意味をつなげるだけでは理解できなくなる難しさがあります。一方、英文は、単語の順序(並び)が重要であり、省略をすると文として成り立たなってしまいます。もちろん省略を行う用例も多くありますが、一文の中で省略された対象を見つけやすいことが多いです。

「立ちぬ」はどこで切れるのか?

古文で正確に単語を切り分けたり、省略を補ったりするには、文法の知識が必要です。古文が苦手な方はめまいがしてくるところですが、気を取り直して、「風立ちぬ」について、実際に古語辞典を引いてみましょう。

「かぜ」と「たちぬ」は切り分けられたとして、「たち」と「ぬ」を切り分けられたでしょうか。とりあえず「たちぬ」をそのまま入力して検索してみるのも手です。検索すると「たちぬふ」のような「たちぬ」より長い動詞が検索されてくるので、「たちぬ」をどこかで切って調べる必要があることが分かります。ここでは無難に「たち」「ぬ」で切って調べていきましょう。

なお、古語辞典のキホンは「単語は終止形で引く」なので、「たち」の終止形は何か、という文法の知識が必要ですが、ここは構わず「たち」をそのままBrain+に入力してみます。

出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

Brain+の旺文社 全訳古語辞典では、「たち」の検索結果は、上から下記の6項目が並びます。

  • ①たち-
  • ②-たち【達】
  • ③たち【館】
  • ④たち【太刀・太刀】
  • ⑤【活用】たち→立つ(用)
  • ⑥【活用】たち→た・つ(用)
出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

本文を確認するとわかりますが、①~④は動詞ではなく、今回は除外できることが想定されます。その次の⑤と⑥が動詞です。

ここで分かるように、実はBrain+の古語辞典(新全訳古語辞典、旺文社 全訳古語辞典)は、入力した文字列が”終止形以外”の活用形に一致しても検索し、検索結果には「活用」と明示の上で、その単語の終止形の見出し語が表示されます。なので、終止形でわざわざ引く必要もなく、とりあえず分からない文字列を入力してみる、という手が使えます。ちなみに、旺文社 全訳古語辞典では、⑤と⑥の検索結果では「活用」と表示するとともに、「(用)」と示すことで、活用の種類が「連用形」であることも示してくれていますね。

⑤は「立つ」の漢字表記が「風立ちぬ」と同じなので間違いなさそうですが、念のため、先に⑥の内容も確認しておきましょう。

⑥の「たつ」の本文を確認すると、「断つ・絶つ」、「裁つ」の2つの漢字表記とともに、見出し語の下に「(他タ四)」という品詞に課する情報があることに注意しましょう。これは、他動詞、タ行、四段活用、の意味です。今回は、漢字表記が異なることはもちろん、「風立ちぬ」には目的語がないことを踏まえれば、他動詞の単語は当てはまらないと除外できます。

余談ですが、この「断つ」の項目には「語の広がり」として、下記の記載があります。こういう学びの広がりに出会えるのも、学習辞典を使う楽しみの1つですね。

「太刀(たち)」は「断つ」の連用形「断ち」が名詞化したもので、「切り離すもの」の意

出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

古文を品詞分解することが最初の一歩

あらためて⑤の「立つ」の項目をあらためて確認しましょう。大きく2つの分類がされていて、それぞれに品詞情報が異なることに注意してください。下記の2つが書かれています。

(自タ四){た・ち・つ・つ・て・て}

(他タ下二){て・て・つ・つる・つれ・てよ}

出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

前者は、自動詞、タ行、四段活用の意味で、その具体的な活用は{}内を順に、未然形=「た」、連用形=「ち」、終止形=「つ」、連体形=「つ」、已然形=「て」、命令形=「て」であることを示しています。後者は、他動詞、タ行、下二段活用で、同様の並びで具体的な活用を示しています。多くの古語辞典において、この未然形~命令形までの順で、活用形を列挙する表記方法は同じですので覚えておきましょう。

今回は「風立ちぬ」には目的語がないと考えて、自動詞である前者の語彙の中から当てはまりそうなものを探すと、7番目に下記があります。風という自然現象を主語にしていることから、意味付けとしては一番適切そうですね。

「(風・波・雲・霧・霞(かすみ)・煙などが)生じる。起こる。立ちこめる。」

出典:旺文社 全訳古語辞典(旺文社)

ここまで見てきたように、Brain+の古語辞典(新全訳古語辞典、旺文社 全訳古語辞典)は、単語の活用形で引くと、終止形の見出し語を表示してくれるので、古文を初めて学ぶ皆さんには、非常に便利です。しかし、じゃぁ活用形を知らなくてもよいか、というのは大きな間違いです。

今回の「風立ちぬ」の例でも「かぜ」「たち」「ぬ」と区切るのではないか、と推測できるようになることが重要です。 文章を、単語とその役割ごとに分解できるか(品詞分解と呼びます)。それが古文を読み解く最初の入り口です。

古文を品詞分解するには、単語の「活用形」とその「接続」が非常に重要な手がかりになります。学習者用の古語辞典は、意味だけでなく、「活用形」と「接続」の情報を教えてくれます。次回の記事では、今回説明できなかった「ぬ」の正体を古語辞典で調べることで、活用形と接続の重要性を確認したいと思います。

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