【学校関係者の皆様向け】学校でのICT活用の進め方 ~EDIX2024講演より
この「お役立ち情報」では、主にBrain+をご利用中の生徒の皆さんに、Brain+の活用の仕方などをご紹介する記事を公開していますが、Brain+の学校への導入や利活用を検討いただいている学校関係者の皆様向けに、学校でのICT活用の進め方についてヒントとなるような情報もご紹介したいと思います。今回はEDIXの講演をご紹介します。
EDIXとは?
毎年5月に、学校など教育に関わる方に向けたEDIXという展示会が東京ビックサイトで開かれていますがご存じでしょうか。教育に関する展示会としては国内最大級で、今年も多くの企業や団体が参加し、約3万人の方が来場されました。Brain+も展示させていただき、多くの学校の先生、教育関係者の方にお立ち寄りいただき、心より感謝しております。(当日の当社ブースの様子はこちら)
当社ブース内では著名な教育関係者の皆様によるセミナーも開かれたのですが、Brain+関連でも2校のBrain+導入校の先生にご登壇いただき、大変有意義な講演をいただきました。どちらの講演も、Brain+関連といっても、Brain+の説明が主眼ではなく、中学高校の現場の先生が抱えている、学校で実際に起きている本質的な課題をあげて、それにいかに向き合うべきか、またその課題を、ICT活用により解決に導く具体的な実践例をご紹介いただきました。現場の先生にとって非常に有意義な内容だと思いますので、本記事では、その講演の一部内容をご紹介いたします。
近畿大学附属高等学校・中学校 乾 武司 先生のご講演
乾先生のご講演では、GIGAスクールで広がった学校での一人一台端末は「本当に使われているか」という大きな課題を指摘されています。
端末の利活用の度合いは地域差や学校差が大きく、まさに今、政府、文科省が取り組んでいる課題の1つでしょう。文科省では課題解決に向けた具体的な指標(KPI)を掲げています。例えば、端末を週3回以上活用する学校を2024年度中に100%とし、週3回以上の具体的な活用シーンとして、①調べる場面、②発表表現する場面、③教職員と(生徒との)やり取りの場面、④生徒同士のやり取りの場面、⑤理解度に合わせて課題に取り組む場面、の5つの場面での端末の利用率を2026年度に80%以上にすることをKPIとして掲げています(出展:第5回デジタル行財政改革会議資料「子供たちと教師の力を最大限に引き出すためのデジタルを活用した教育の充実」)。
KPIの達成に向けて、端末を使って何々を調べなさい、プリントを端末に配信するからそれを解きなさい、という授業が思い浮かびますが、乾先生の講演では、端末の活用は、先生が教えるために都合が良いという前提で取り組んでいないか、それでは生徒の主体的な端末の利用、ひいては学校でのコミュニケーションに繋がる使い方には繋がらないのでは、と指摘されています。先生が教える、から始めるのではなく、「生徒の疑問、関心からできるだけスタートする」ことで、生徒がもう一歩探りたい、というシーンを作る必要があるとし、それができるのは、生徒が集う学校の場が最適であり、いわゆる探究的な活動こそが、学校が提供できるキラーコンテンツになりえる、と主張されているのです。
実際には、様々な生徒がいる中で個人の関心から授業を進めると、先生にとっての負担が大きくなりがちです。生徒にとっても、自由度があがれば、膨大な情報の海から必要な情報を探し出し、かつそれを正しく理解するのは簡単ではありません。乾先生は、講演の中でいくつかの対応方法を示唆してくれるとともに、実際の授業で取り組まれた具体的な事例を紹介されています。
この乾先生の授業例は、まさに文科省が掲げる上記5つのKPIに向けた活動を合わせて実践していることに驚きます。乾先生の探究的な活動の授業では、個人ではなく協働的な活動とすることで、学校で実践する意義を高めるとともに、「気になったことは何?」と全生徒に投げかけることで、学びを自分だけの個人的なものとせず、学習内容が実社会とリンクしていくことに気付かせることができる、という重要な示唆も含まれていると思います。
「学校がもっと楽しい場に」という乾先生のメッセージが非常によくわかる講演になっているので、ぜひ詳細を下記の動画で確認いただければと思います。
芝国際中学校・高等学校 唐澤 博 先生のご講演
唐澤先生のご講演では、学校の教育現場は、生徒の未来を奪わないために変わるべきだという観点から、辞書の位置づけに関する、学習指導要領の変遷をご説明されています。10年以上前の学習指導要領から、紙かデジタルか問わず、辞書を活用できるように指導することと書かれていますが、その学習指導要領の改訂サイクル(約10年)では追いつけないほどに、5年先10年先が分からない世の中になっており、最近では紙の辞書を使ったことがないという先生も現れてきているそうです。生徒が「AIネイティブ世代」となる中で、辞書指導はどうあるべきかが問われていると感じます。
唐澤先生は、こうなると学校の授業の現場においても「先生自身が学習者としては経験していないことに挑戦する」ことは避けられないと指摘された上で、英語授業においては、ICT機器やサービスを気軽に取り入れることができるとして、いくつかの実践例を挙げておられます。
特に簡単なICT活用例として、生徒が授業に対して受け身(受動的)になりがちだが、能動的にするには?、という古くからある課題への対応例を挙げておられます。能動的とは、身体を動かすことではなく、脳をいかに動かすか、ということが重要で、動くことで悪目立ちしたくない生徒には、スマホやタブレットを手元で操作し、匿名で書き込ませる仕組みを提供すれば、”脳”動的な活動をすぐにし始める、と指摘されています。確かに、一人一台端末があるからこそできる授業でのコミュニケーションの取り方ですが、実現するための様々なツールがある中で、クラウドベースで手軽に利用できるツールであることもポイントでしょう。ぜひどんなツールを使っているかを、下記の動画でご確認いただければと思います。
ただし、実は当日の講演の場でも起きてしまったのですが、現場のWi-Fiネットワークの環境が悪く、クラウドベースのツールをサクサクと繋げることができない問題が発生してしまいました・・。当社側の落ち度で唐澤先生はじめ、当日ご参加いただいていた皆様には大変申し訳ございませんでした。
学校現場で一人一台が進んでも、このようなネットワークの問題がまだ解決できていない場合がある、ともお聞きしています。実際、先に挙げた、国を挙げて推進している「子供たちと教師の力を最大限に引き出すためのデジタルを活用した教育の充実」の方針においても、ハード面で「速度不十分」という一見単純な課題の解決が急がれるとしており、サンプル調査では、必要なネットワーク速度確保済みの学校は35.7%に過ぎないとされています。まさに「子供たちと教師の力を最大限引き出す」ためには、端末の整備だけではなく、ネットワークの質の向上が求められていると思います。文科省では、2025年度中に100%の学校で速度確保ができることを目指しています。Brain+はオフラインでも使える点が売りではありますが、読解アシストなどクラウドベースが前提になっている機能もあります。クラウドベースの機能は、今後のAI活用や学習ログの効果的な活用などにおいて必須の要件となりつつあります。国を挙げての、学校教育現場でのネットワークインフラの更なる強化に期待したいと思います。
補足)映像字幕コンペティションについて
ところで、唐澤先生のご講演の中では「映像字幕コンペティション」が今年も開かれるというご紹介があります。
映像字幕コンペティションは、カナダのNFB(National Film Board Of Canada)の映像作品に、中学生、高校生が、日本語の字幕を付けてその出来を競う大会(主催:一般社団法人グローバル教育情報センター)です。自動翻訳が当たり前のAI時代に字幕とは何かをあらためて考えることで、英語だけでなく日本語の良さを知る機会になると思います。3人1組で参加する必要があるのもポイントで、過去の大会の発表を見ると、仲間と創作する喜びが、主体的な学習意欲に繋がっていくことが良く分かります。(過去の受賞作品や講評はこちら)。
Brain+のような、英語も日本語も様々な辞書を横断して検索できる辞書サービスは、字幕を考える際の活用ツールとしてぴったりと考えて、弊社も協賛させていただいております。今年も2024年11月に最終審査会が予定されていますが、まだ時間がございますので、様々な学校からのご参加をお待ちしています!(応募の詳細はこちら)。